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老化は病気。治療できる!

『日本美容皮膚科学会』の総会に参加しました。

この会、毎年8月に開催される。暑さでしんどい思い出しかないのですが…
今回はなんと虎ノ門ヒルズが会場!行き帰りが楽ちんな2日間でした

他の先生方にとっても虎ノ門は便利ってことで、1,000名超の会場参加という盛会ぶり
もちろん地理だけでなく、とても興味深い演題が多かったからです!

 

学会の会頭をおつとめになったのは名古屋市立大学教授・森田明理先生

 

森田先生のパワーのおかげで、ほんとうに興味深い研究発表が、全国から集まりました🙇‍♀️

 

学会に参加するため、順大時代からの親友が上京してきた
2日間いっしょに行動
学会は、こういう再会もあるから、いいのです

なかでも、特に印象深かった特別講演について、少し書きますね

老化細胞除去による個体老化制御」 

東京大学教授 中西真先生

まさに「アンチ」エイジング=抗加齢が実現するかもしれないという、大興奮のご講演です。

その根本は
老化は病気であり、病気である以上は治療や予防が可能
というお考え

これまでの「常識」では、「人は、徐々に老化して死ぬ。それは避けられない」と考えられてきました。しかし近年「老化は一種の病気」と結論づける研究発表が多く、抗老化研究が盛んになってるの。

 

中西先生の研究はそのうちの1つで、

老化細胞」というやつらを除去すれば、
「老化(早老症をふくむ)」は阻止できるし、
「老化によって生じる加齢性疾患(アルツハイマー、糖尿病、腎臓病、がんなど)」も防止できる。

 

【もうすこし詳しく】

1.まず、われわれヒト(ホモサピエンス)の「最大寿命」は、およそ120年と決まっている

これは生物としての定めであり、いまのところどうやっても「不死」にはならない。

ちなみに「ホッキョククジラ」の最大寿命は200年、「ニシオンデンザメ」は4~500年といわれている。びっくり!ただ、かれらにしてもいつかは死ぬ。

なお、この「最大寿命」が動物ごとにどうやって決まっているかは、まだ解明されていません。

 

2.次に、「最大寿命まで老化しない動物たち」はけっこういる

不死ではないが「不老」。たとえばカメ、ワニ、ゾウ、ハダカデバネズミなどなど。
かれらは年齢を重ねてもほとんど老化しない。そのため、歳をとっても死亡率が上がらない。
で、最大寿命が来たら、いきなり死ぬ。信州でよく聞く「ピンピンコロリ」です

いいわよね~

ハダカデバネズミはよく「不老」の研究材料にされています。ゾウやワニより扱いやすいものね。ちなみにハダカデバネズミの最大寿命はおよそ40 年と長い(ちなみにマウスは3~4年)のですが、注目すべきは長寿であることよりも死ぬまで老化しない「ピンピンコロリ」なことなの

 

3.【ここがポイント】
ヒトが「最大寿命」まで生きられずに「老化で早死に」するのは、「老化細胞」のせいではないか

人間の体はおよそ60兆個の細胞からなり、その多くは「幹細胞」から分化して分裂していったもの

ところが細胞は、およそ50〜60回分裂したら、もうそれ以上は分裂できなくなって(テロメア短縮/ヘイフリック限界)、活動を停止してしまう

それが「老化細胞」

細胞の自然な活動停止以外にも、活動停止した「老化細胞」ができる要因はある。
紫外線や放射線、薬剤などのストレス、さらにタバコなどによっても、細胞は老化してしまいます

この「老化細胞」たちの何が問題かというと、
活動停止しているだけで、生きているということなの。
だから、すんなり消えてなくならないの。
カラダの中に、どんどん蓄積していきます...

しかも老化細胞は、限界まで分裂を経験してきているので、大きくて平たくてしかもDNAが現役の正常細胞より多い。だもんだからむしろ正常細胞よりも活発に😅ATP産生活動を行ってしまう
(現役社員よりも高給取りのイメージ...)

しかも老化細胞のリソソームは不良ゴミタンパク質(酸性)で満ちている…….で、さらにリソソームが穴ぼこだらけで、そのゴミが細胞内に滲み出て来ている。そのうえ自分の中だけでなく周辺に炎症性タンパク質をまき散らしてる(SASP =老化関連分泌現象)というのです!!

キャー😱😱😱😱😱😱😱恐怖

その老化細胞がまき散らすゴミタンパク質こそが、各臓器に慢性炎症を起こして、加齢性疾患を引き起こし、がんのリスクも高める

負の連鎖!
(職場でも家庭でも、不機嫌をまき散らす方、ほんとうに周りはダメージ受けますよね)

 

4.そんな老化細胞たちに消えてなくなってもらえないのか

そもそも細胞というのは酸性だと死にます。
老化細胞のゴミタンパク質は酸性に傾いている。ほんらい、それによって死ぬはず。

ところが!老化細胞は酸性を中和する機構が発達してるの!

(働かないくせに)現役細胞より活発にグルタミン代謝する過程で、副産物としてアンモニアがばんばん作られ、なんとそのアンモニアのおかげでゴミによる酸性を中和できてしまうというの

...なんという逞しさなの。
でも、ということは!

グルタミン代謝を食い止めれば、老化細胞は酸性のまま死ぬのではないか!

ということで、グルタミン代謝の必須酵素(GLS-1)を阻害する薬を開発している、というのが中西先生たちのご研究なのでした~

スゴイ🤩🎉🎉

GLS-1阻害薬は、抗がん剤としてはアメリカですでに臨床治験も始まっている!
中西先生は、早老症などの疾患の薬として実現させたいとおっしゃってました😊

 

以上にかんして、もっと詳しく知りたい方は、先生のご著書をどうぞ

タイトルはずばり『老化は治療できる!』

専門書ではない新書なので、手軽にお読みいただけます